3代目・岡松美樹が挑む「変革と継承」

成長戦略

既存技術を新市場へ転用するイノベーション。

―既存事業と新事業(トロン温浴)のシナジーで
切り拓く、100年企業の未来と目指す社会―

インタビュー概要

  • 語り手: 岡松 美樹 氏(ティーコム株式会社 代表取締役 / 3代目経営者)
  • 聞き手: 鍬田 和彦 氏(インタビュアー / 対談者)
  • 主題: ティーコム株式会社における事業承継と経営改革、既存のIT/ICTインフラ事業と新規ヘルスケア事業(トロン温浴)のシナジー、地方創生および海外展開を通じた100年企業の実現

1. プロローグ:創業から受け継ぐ「人を大切にする」精神と3代目の覚悟

東京都港区三田に本社を構えるティーコム株式会社は、大手通信メーカーやキャリア向けにロジスティクス、ICTソリューション、ソフトウェア開発、テクニカルサポートを提供する技術者集団である。同社は創業以来、社会の通信・情報インフラの根幹を支え続けてきた。

3代目代表取締役に就任した岡松美樹氏は、就任に伴い企業理念を一新した。「人を大切にすること」を全ての起点とし、「利他の心で経営」「やりがいの提供」「幸せの追求」を経営理念に掲げている。NECグループをはじめとするパートナー企業との強固な信頼関係を基礎としながらも、岡松氏は「100年続く企業」を目指し、既存事業の発展と新たな事業への果敢な挑戦を続けている。

本対談記事では、対談者の鍬田氏が岡松代表の真意に迫り、既存事業が持つポテンシャルと、新事業進出補助金に採択された「トロン温浴事業(ヘルスケア・地方創生)」の全貌、そして双方が生み出すシナジーと将来展望を掘り下げる。


2. 【対談PART 1】既存事業の強みと「目に見える自社プロダクト」への飢餓感

創業の歴史と現場を支える技術者たち

鍬田: ティーコムさんはもともと電話の回線ケーブルの敷設工事からスタートされ、現在では大手企業向けのシステム開発やICTインフラ運用まで幅広く手掛けられていますよね。岡松さんが3代目として代表に就任されてから、どのような事業構造と強みを実感されていますか?

岡松: そうですね。うちの歴史を辿ると、元々は電話の回線ケーブルを作るところからスタートしています。現在は大手通信メーカー様やキャリア様、特にNECグループ様との取引が主軸となっています。業務としては、システムエンジニアがお客様先に入る常駐型のソフトウェア開発や、ヘルプデスク、キッティング作業といった技術支援が中心です。社会のITインフラを足元から支えるという意味では、非常に重要でやりがいのある事業を展開していると自負しています。

鍬田: 一方で、そうした労働提供型や客先常駐型のビジネスモデルならではの課題や、自社事業としての模索もあったのでしょうか?

岡松: まさにそこが長年のテーマでした。非常に重要なお仕事をさせていただいているものの、自社独自の商品、つまり「目に見える自社プロダクト」が手元にないという状況が続いていました。人や技術力そのものが商品であるという側面が強い中で、社員がより誇りを持って働ける環境を作ること、そして自社発の価値を社会に提供することへの強い想いがありました。

理念の再構築と「人を大切にする」経営

企業理念の構成要素ティーコムが掲げる具体的な指針・価値観
経営理念一、利他の心で経営  一、やりがいの提供  一、幸せの追求
ミッション関わる全ての人が笑顔になる社会へ
ビジョン多様性を活かし、オリジナリティ溢れる企業
行動指針(バリュー)常に、チャレンジング/明るく、楽しく/相手目線/人に優しく自分に厳しく/クイックレスポンス/ポジティブシンキング

鍬田: WEBサイトに掲載されている代表メッセージでも、「人を大切にすること」や「他者へのギブの精神」を強く打ち出されていますね。

岡松: 代表になってから理念を一新しました。単なる技術の提供だけでなく、社員一人ひとりが自分の人生を主体的に捉えられるよう「個人ビジョン研修」を導入したり、月1回のリフレッシュ会を開催したりしています。社内の女性幹部育成や環境改善にも取り組んでいます。私たちが目指しているのは、技術だけでなく“人柄”でも選ばれる存在になることです。


3. 【対談PART 2】採択率30%の壁を突破――新事業進出補助金で挑む「トロン温浴」と地方創生

難関補助金の採択と宮崎県高春町との縁

鍬田: 既存事業の安定運用にとどまらず、最近では非常に思い切った新規事業に乗り出されたとお聞きしました。

岡松: はい。事業の持続可能性を高め、新しい柱を作るために「新事業進出補助金」に挑戦しました。採択率がおよそ30%という非常に難しい補助金だったのですが、無事に採択していただくことができました。採択された以上は「もう本気でやり切らなければならない」と身が引き締まる思いです。

鍬田: 具体的にはどのような事業領域に進出されるのですか?また、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

岡松: 主に「地方創生」と「ヘルスケア」を掛け合わせた事業です。実は、以前から「都心の企業は地方から流れてくる人材に支えられている」という感謝があり、地方へ恩返しがしたいと考えていました。私自身には地方に田舎がなかったのですが、ご縁があって宮崎県高原町(たかはるちょう)の元町長さんや自治体関係者の方とつながりました。国の「地域活性化企業人」という制度を活用し、うちの社内から志願してくれた社員を1名、宮崎県高春町へ単身赴任で派遣しています。現在は役場の中に入って地域支援業務を行っていますが、任期終了後を見据えて現地での事業展開を本格化させています。

鍬田: その宮崎の拠点で展開されるのが「トロン温浴」なのですね。なぜそのヘルスケア事業を選ばれたのですか?

岡松: 実は、私の父をガンで亡くしている経験が大きく影響しています。父が末期ガンで手術や強い治療ができない状態になった際、治療の副作用で免疫力が低下し、大変な苦労をしている姿を間近で見てきました。高齢になっても、若くても、健康でなければ人生を楽しめません。

交流会で医療系コンサルやサロンを手掛ける方と知り合い、「トロン温浴」という手足を温水に浸す温熱療法を知りました。特殊な鉱物を用いてろ過・攪拌した温水に手足を20〜30分ほど浸すことで、自己免疫力を高めたり、体を芯から温めたりする効果が得られます。アトピー肌の改善や日々の健康維持、ガン患者の方のQOL維持など、幅広いケアに貢献できるエビデンスもあります。

鍬田: 身体への負担が少なく、手軽に体験できるのは素晴らしいですね。実は私もかつて重度のアトピーに悩んでいた時期があり、酵素風呂などの温熱療法で免疫力を高め、肌が脱皮するように劇的に改善した体験があります。手足をつけるだけのトロン温浴なら、おがくず風呂のような大掛かりな手入れも不要で、手軽に習慣化できますね。

岡松: そうなんです!手足を20分ほど浸す手軽さで、1回2,000円程度で継続できる仕組みにしています。宮崎での拠点設立とともに「トロンで未来を作る会」の活動を推進し、健康維持や予防医療に貢献していきたいと考えています。


4. 【対談PART 3】IT×ヘルスケア×地方創生――既存事業と新事業が起こす構造的シナジー

既存のシステム開発力を新事業の基盤へ

鍬田: 異業種に見える「IT・システム開発(既存事業)」と「トロン温浴・地方創生(新規事業)」ですが、社内ではどのようにシナジーを生み出していくのでしょうか?

岡松: 一見すると全く異なる分野に見えますが、実は既存事業のノウハウが大きな強みになります。トロン温浴事業をフランチャイズや代理店展開、あるいは店舗運用していくにあたり、予約管理システムや顧客管理ツール、マーケティングツールといったシステマチックな仕組み作りが必要不可欠です。うちには社内にシステム開発やICT運用のプロフェッショナルが揃っていますので、ツール構築や業務の自動化、事業計画のシステム化を自社内で内製・最適化することができます。

また、パートナー企業や専門メンバーと連携し、補助金申請からITインフラ構築までを一貫して推進できる体制を整えています。これにより、新規事業の立ち上げスピードと成功確率を飛躍的に高めています。

鍬田: 「日本の高齢化・人口減少」という課題意識から、海外展開についても触れられていましたね。

岡松: はい。日本国内だけに依存する「日本一本足経営」からの脱却が必要だと感じています。私自身、インドネシアやフィリピンといった東南アジアの若い熱気と市場の成長性を肌で感じてきました。フィリピンは平均年齢が約25歳と若く、人口動態を見ても著しい成長を遂げています。

ティーコムとしても、海外のパートナーや経営メンバーとともに少しずつ海外事業の種まきを始めています。日本の優れた医療・ヘルスケア技術や伝統的な強みを活かしつつ、海外拠点や外国人材との協働を通じて、お互いが「ウィンの関係」になれる100年企業の基盤を築いていきたいと考えています。

<時代に合わせてイノベーションポイント>

1. IT企業からヘルスケア企業へ

  • 既存のICT・システム開発事業を基盤に、トロン温浴というヘルスケア領域へ進出。
  • 異業種への参入ではなく、既存技術を新市場へ転用するイノベーション。

2. 「人」を商品にする会社から「自社プロダクト」を持つ会社へ

  • 技術者・人材の提供が中心だった事業モデルから、自社独自の商品・サービスを生み出す方向へ。
  • 労働集約型ビジネスから、ストック型・プロダクト型への転換を目指している。

3. IT × ヘルスケア × 地方創生

  • 一見すると関係のない3領域を組み合わせている。
  • トロン温浴を単なる店舗ビジネスではなく、地域活性化と健康課題を解決する事業として捉えている。

4. 既存のIT技術を新規事業の「仕組み」にする

  • 予約管理、顧客管理、マーケティング、業務自動化などを自社のIT人材で構築。
  • 新事業をゼロから始めるのではなく、既存事業の技術・人材・ノウハウを新事業の競争力に変換している。

5. 地方への「恩返し」を事業に変える

  • 宮崎県高原町との関係を、単なるCSRや地域貢献で終わらせず、社員派遣→地域支援→事業展開へつなげている。
  • 社会貢献と事業成長を両立させるモデル。

6. 事業承継=守ることではなく、変えること

  • 3代目として創業者・先代から受け継いだものを守るだけでなく、企業理念、新規事業、海外展開まで大胆に変革。
  • 「継承」と「イノベーション」を同時に進めている。

7. 「人を大切にする経営」を制度・事業に落とし込む

  • 個人ビジョン研修、女性幹部育成、リフレッシュ会など、理念を社内制度へ具体化。
  • 「人を大切にする」という抽象的な理念を、組織づくりと事業づくりに実装している。

8. 日本一本足経営からの脱却

  • 国内市場だけに依存せず、インドネシア・フィリピンなど海外市場へ視野を広げる。
  • 人口減少を「リスク」と捉えるだけでなく、海外市場・外国人材を成長機会として捉えている。

9. 100年企業を「規模」ではなく「変化できる会社」として考える

  • 100年続くために、既存事業を守るだけではなく、新しい市場・技術・地域・人材を取り込む。
  • 継続性の本質を「変化への適応力」と捉えている。

対談を終えて(編集後記)

今回の対談を通じ、3代目経営者として既存の通信・IT事業を安定成長させつつ、ガンで亡くなった父親への想いから「トロン温浴」という新規ヘルスケア・地方創生事業へと果敢に踏み出す岡松美樹代表の力強い信念が明確になった。大手通信キャリア案件で培ったシステマチックな開発力・管理力を、地域課題やヘルスケア事業の仕組み化に応用するシナジー構造は、事業承継や新事業進出を目指す多くの経営者にとって極めて価値あるモデルケースと言えるだろう。

代表 門岡松 美樹

住所:東京都港区三田4-1-4 城南ビルディング三田6F
ホームページ
https://www.tcomm.co.jp/


この記事を書いた人:鍬田 和彦(くわた かずひこ)

3RD 編集長 / ブランドプロデューサー / M&Aバリューアップディレクター

企業のブランド価値向上を専門とし、デザイン・ブランディング・マーケティング・M&Aを掛け合わせた企業成長支援を行う。

「100年企業は日本の宝」という想いのもと、次世代へ事業を受け継ぐ経営者や、3代目・4代目の挑戦を取材・発信するWEBメディア「3RD」を運営。企業の歴史や理念だけでなく、その先にある未来へのビジョンを伝えることを使命としている。


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